連載:福祉現場のマネジメントを考える 組織と人づくり

連載:組織と人づくり

組織開発の価値は?

~組織開発とはなにか2~

「ソーシャルワーク」との類似性に着目
 以上の4 つの価値について、社会福祉の方法論である「ソーシャルワーク」の価値と似ていると思われた読者もいるのではないでしょうか。私も組織開発の勉強を始めて、個人の尊厳の重視、人々の変化や成長の可能性への信頼、クライエントや利用者の意思決定の強調、ソーシャルワーカー・実践者と利用者・クライエントのパートナーシップ関係などの点で、ソーシャルワークと組織開発の親和性や類似性を発見しました。そして、組織開発の4つめの社会生態学的な指向も、ソーシャルワークのエコシステムの視座と重なるところです。 このように社会福祉の方法論であるソーシャルワークと組織開発の価値の類似性・親和性も、障害者支援施設・三恵園で進めている「三恵園の未来に向けての組織と人づくりプロジェクト」で組織開発を方法論として採用した理由のひとつです。

 さらに組織開発の価値は、三恵園で引き継がれてきた価値である「人を大切にする」とも一致します。三恵園管理者である宮脇真佐恵さんは、プロジェクト推進会議のなかで、成文化されていないけれども三恵園で代々引き継がれ、今後も継承していきたい価値として「人を大切にする」をあげ、これを重視した施設経営・運営をしていきたいと常々語っています。この「人を大切にする」も組織開発の価値とぴったり一致します。このように、ソーシャルワークの価値、三恵園で重視されている価値、そして組織開発の価値が重なっていることからも、組織開発を三恵園プロジェクトで用いる方法論として採用した次第です。

【参考文献】
マーシャック・ロバート・J(2012)「組織開発 (OD)とは何か?:起源と哲学、その可能性」『人 間関係研究』11、p.153-172。
Marshak,R.J. (2014).Organization development as an evolving field of practice. In B.B.Jones&M.Brazzel.(Eds),The NTL Handbook of Organization Development and Change : Principles, Practices, and Perspectives(2ed.ed.,pp.3-24). San Francisco, CA: Wiley.

                                                                                                                                                                        <福祉の季刊紙「渚の風」4号(2015.4.27)の記事の一部を2018年2月26日に修正・加筆して再掲>

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著者プロフィール
安田美予子(やすだ・みよこ)
関西学院大学人間福祉学部教授.。これまで、保健医療や障害領域にける利用者支援をソーシャルワークに基づき研究してきた。 現在は、社会福祉施設・事業所における職場の人間関係、リーダーシップ、チームワーク、人間関係、組織文化など組織の人的プロセスを対象に組織開発や組織行動論などに基づいて、実践・研究を行っている。
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