連載:福祉現場のマネジメントを考える 組織と人づくり

連載:組織と人づくり

組織開発の価値は?

~組織開発とはなにか2~

 ③クライエント中心のコンサルティングは、組織開発実践者やコンサルタントとクライエントの関係に関することです。組織開発では、外部の専門家よりも内部の人々のほうが知恵を持っていて、適切なプロセスが提供され支持的な環境があれば、人々は自律的に変化をする力があると考えます。その前提のもと、組織開発実践者はクライエントのパートナーであることが強調されています。
 以上の3つの価値の根底には、人々の成長や可能性、個々人の価値や尊厳、人々が持つ知恵といったものに対する信念や信頼が流れていると言えるでしょう。アメリカで発展した「変革マネジメント」をはじめとする組織に変化を起こす方法と組織開発の決定的な違いについて、マーシャックは、それらが経済的な成長を重視しているのに対し、組織開発は人間個人の成長を重視し組織がより機能するようになることを目指し、その結果として、経済的な成果も生まれてくると述べています。
 企業活動で取り入れられる組織開発でありながらも、経済的な成果・結果を第一に重視しないという姿勢は、組織開発の価値によるものでしょう。そして、最近発展しつつある価値が4つめの社会生態学的システムへの志向性です。組織開発の目的は、個人、集団、組織レベルで語れるものではなく、より広範な社会、経済、環境のシステムを見据え、より広いグローバルなシステムへの影響も考慮に入れなければならない、というものです。ある組織の利益の最大化が、環境やコミュニティや国のシステムを害するようであれば、利益追求は避けなければならないと考えられています。近年、企業で重視されつつあるCSRやサステイナビリティなどと同様に、一組織や一企業の成功・発展ではなく、より大きなシステムが視野に入れられているということでしょう。

 

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著者プロフィール
安田美予子(やすだ・みよこ)
関西学院大学人間福祉学部教授.。これまで、保健医療や障害領域にける利用者支援をソーシャルワークに基づき研究してきた。 現在は、社会福祉施設・事業所における職場の人間関係、リーダーシップ、チームワーク、人間関係、組織文化など組織の人的プロセスを対象に組織開発や組織行動論などに基づいて、実践・研究を行っている。
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