序章 未来に向けて
不満や愚痴も学問の対象
この組織や、組織内の人や、人と人との間柄にまつわることに対し、仕事をしている皆さんは次のような思いを抱いたことはありませんか?
「目の前の仕事に追われて、どんな施設・事業所になりたいか職員同士で話しをする機会がない」
「チーム内の情報共有や引き継ぎがうまくいっていないことが多い」
「若い人とコミュニケーションがとれない、話しが通じない」
「パートさんと話しをすることがなく、職場や仕事のことをどう思っているのかわからない」
働く人が気持ちよく、いきいきと働いていない、組織やチームがうまく機能していないと感じると、組織の定義にある「組織の目的達成」に支障を来します。福祉事業所や施設の場合、そのしわ寄せは入居・利用している障害のある人たちに向かいます。
利用者支援は、職員独自の考えや単独行動ではなく、事業所や施設の理念や方針という大きな枠のなかで、複数の職員やチームによる共同作業によって進められるからです。そして今日の福祉施設・事業所のリーダーや管理職には、利用者支援の知識やスキルだけでなく、上に立つ者としての「存在(being)」やリーダーシップのあり様を考え、チームをマネジメントし部下を指導・育成するのに効果的なコミュニケーションなどの知識やスキルを持つことも求められます。
以上のような、組織、チーム、組織で働く人、人々の間柄にまつわる事柄は、アメリカの経営学から生まれた「組織行動論」や「組織開発」という領域で、学問対象として研究され知識の蓄積がなされてきました。一見、組織や組織内の人たちに対する不満や愚痴のように思われることも、実は学問の対象であり、学問的知見と実践によって変化させる必要があると考えられています。そして、そうした問題に「組織開発」という方法で取り組んでいる企 業も実際にあるのです。