連載きずな

 産経新聞西日本朝刊で連載してきた「きずな―三恵園日記」は、令和元年6月から「きずなNEWS」として模様替えし、新たにスタートします。

 事業団は、産経新聞社の社会貢献を目指して昭和19(1944)年に設立されました。社会福祉法人として、支援を必要とする人々のために幅広い活動をする「公益事業」と、障害のある人々を直接支援する「社会福祉事業」を2本柱としています。

 平成28(2016)年4月の改正社会福祉法の施行で社会福祉法人には地域における公益活動が義務付けられ、それまでより一層「地域福祉」「地域共生」を強力に推し進めるよう求められました。

 これを受け、きずなNEWSでは事業団が運営する施設の日常の表情を報告するだけでなく、施設と地域との交流、事業団の社会公益活動についても紹介していきます。

 平成22年6月からスタートした「きずな―三恵園日記」は23年10月、それまでの約1年半にわたる連載記事をまとめた「きずな-三恵園日記」として刊行され、26年1月には過去の記事から118の物語をテーマごとに編集した「障害者支援の1200日 ありがとう」として刊行されました。どちらも福祉現場の”ちょっといい話”が満載です。ご希望の方は事業団本部までお問い合わせください。

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連載きずな

【きずな「三恵園」日記】社会に役立つって…

2012年03月14日

[ 2012年03月14日  大阪朝刊  大阪府下版(2010年7月26日-) ]

 「これおいしいね」。大阪・梅田のある焼き鳥店で池田三恵園(池田市)の利用者3人が満面の笑みを見せた。普段の給食では食べられない焼き鳥。でもそれだけでなく、もう一つ味わいを高める理由があった。串が載っている皿は自分たちが作ったものなのだ。

 自分たちの作品が実際にお店で役立っている!

 平成21年春、一本の電話が同園にかかってきた。「道の駅に陳列してあるお皿はこちらで作っているのでしょうか」。これが始まりだった。

 豊中市で焼き鳥店「鳥ふく」を経営する福田憲一さんからで、新しく梅田に開く店で使う食器を作ってほしいとのことだった。その数300。

 「よし、いっぱい作ったらいいんやね」と、利用者たちは張り切った。粘土をたたく、のばす、切る、型に合わせる、皿の形に整える-。窯に入れるまでの各工程を7人の利用者が分業。毎日約2時間半、不思議とみんなの集中力が続いた。2カ月半後の納期までに約500枚を焼き上げ、ちゃんとした出来の角皿、中皿、しょうゆ差し皿など9種300枚を納めた。

 「みんなの目の輝きが違っていた。人の役に立つということが人をこんなにも力づけるのですね」と担当職員の西田朋広さん。

 ところが、それだけではなかった。2年後の昨年12月、30枚の追加注文が入ったのだ。使っていて割れたり、お客さんに頼み込まれて譲ったりしたという。利用者たちはまた喜んだ。

 型切りを担当した西村優仁さんは「あの皿どんなふうに使われてんのやろ。見てみたいなあ」としきり。福田さんも「ぜひお店に来てください」と誘ってくれて、利用者3人と職員2人で開店した「鳥ふく堂山店」へ。タレの焼ける濃厚な香りがたちこめる店内。そして、カウンター越しに出された皿を見た西村さんは「あっ、僕が作った皿や」。

 「手作りの温かみがあり、味がある」。店主の福田さんの言葉に、串を一気に頬張って「おいしい!」。純粋に作品としての評価を受けた利用者たちの顔が上気し、食欲はさらに高まるようだった。

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