連載きずな

 産経新聞西日本朝刊で連載してきた「きずな―三恵園日記」は、令和元年6月から「きずなNEWS」として模様替えし、新たにスタートします。

 事業団は、産経新聞社の社会貢献を目指して昭和19(1944)年に設立されました。社会福祉法人として、支援を必要とする人々のために幅広い活動をする「公益事業」と、障害のある人々を直接支援する「社会福祉事業」を2本柱としています。

 平成28(2016)年4月の改正社会福祉法の施行で社会福祉法人には地域における公益活動が義務付けられ、それまでより一層「地域福祉」「地域共生」を強力に推し進めるよう求められました。

 これを受け、きずなNEWSでは事業団が運営する施設の日常の表情を報告するだけでなく、施設と地域との交流、事業団の社会公益活動についても紹介していきます。

 平成22年6月からスタートした「きずな―三恵園日記」は23年10月、それまでの約1年半にわたる連載記事をまとめた「きずな-三恵園日記」として刊行され、26年1月には過去の記事から118の物語をテーマごとに編集した「障害者支援の1200日 ありがとう」として刊行されました。どちらも福祉現場の”ちょっといい話”が満載です。ご希望の方は事業団本部までお問い合わせください。

連載きずな詳細

連載きずな

【きずな「三恵園」日記】二人三脚の手提げカバン好評

2017年12月19日

古くなった布を細く裂いて織り込む「裂き織り」の名手がいる。生活介護事業所「なごみ苑」(能勢町)の利用者2人だ。反物を作る額田喜代美さん(70)と縫製担当の四野久子さん(66)。二人三脚で製品化した手提げカバンはやわらかな風合いが好評で、口コミで注文が相次ぐ。気を良くした2人は「もっともっと作っていきたい」と意欲を燃やしている。

■お互いの特技を生かす
額田さんと四野さんは、よく似た経歴を持つ。ともに救護施設に入所。その後、グループホームに移り、なごみ苑には平成19年の開所以来通っている。額田さんは機織り機の技術を習得し、四野さんはミシンが得意だ。
2人が裂き織りに取り組んだのは、生活をサポートする阿部孝子、阪井郁子の両支援員らの何気ない言葉がきっかけだった。「お互いの特技を生かし、試しにカバンでも作ってみたら」。2人は大きくうなずいた。地域の人から事業所に贈られた古い着物を活用し、額田さんは横糸の代わりに着物をひも状に裂き、縦糸の丈夫な木綿糸と組み合わせながら織り込み、反物に仕上げる。これを四野さんがミシンで縫って布製のカバンを作った。
大きさは持ち手部を含めずに縦40㌢、横30㌢、マチの部分10㌢。横糸で使った生地によって、さまざまな色調になる。その出来栄えに2人は「いい感じ」と口をそろえる。

■新商品を売り出そう
カバンは、ボランティアとして民謡の指導に来てもらっている女性たちに事業所がプレゼントしたところ、高い評価を受けた。「毎日使いたくなる」「買い物の頼れる存在」などと口々に話し、それが話題になり、これまでに30個以上が売れた。
民芸品としての性格も帯びるカバン。現在はノートパソコンが入る大きさだが、知り合いからのリクエストもあり、少し小さめのカバンを試作中だ。有川美子支援員は「2人と『新しい商品を売り出そう』と話し合っています。2人が協力して、ひとつのものを作れるよう、今後も寄り添いたい」と話す。世界にひとつだけのリサイクル品づくりは、さらなる進化を続ける。
                                                                                                                                                             (三宅統二)

ページトップにもどる