連載きずな

 産経新聞西日本朝刊で連載してきた「きずな―三恵園日記」は、令和元年6月から「きずなNEWS」として模様替えし、新たにスタートします。

 事業団は、産経新聞社の社会貢献を目指して昭和19(1944)年に設立されました。社会福祉法人として、支援を必要とする人々のために幅広い活動をする「公益事業」と、障害のある人々を直接支援する「社会福祉事業」を2本柱としています。

 平成28(2016)年4月の改正社会福祉法の施行で社会福祉法人には地域における公益活動が義務付けられ、それまでより一層「地域福祉」「地域共生」を強力に推し進めるよう求められました。

 これを受け、きずなNEWSでは事業団が運営する施設の日常の表情を報告するだけでなく、施設と地域との交流、事業団の社会公益活動についても紹介していきます。

 平成22年6月からスタートした「きずな―三恵園日記」は23年10月、それまでの約1年半にわたる連載記事をまとめた「きずな-三恵園日記」として刊行され、26年1月には過去の記事から118の物語をテーマごとに編集した「障害者支援の1200日 ありがとう」として刊行されました。どちらも福祉現場の”ちょっといい話”が満載です。ご希望の方は事業団本部までお問い合わせください。

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【きずな「三恵園」日記】「おやつ作り」が引き出す力

2016年10月18日

 障害者支援施設「第2三恵園」(能勢町)で、月に一度の「手作りおやつを食べる会」が催された。今月のおやつはチョコレートムースケーキ。利用者の藤原ひとみさん(52)=仮名=が30人分を作った。自らケーキを配るひとみさんに「いつもありがとうね」と1人の利用者が声をかけた。今までになかった光景だった。

■見えてきた意外な一面
 ひとみさんがおやつ作りを始めて1年以上たつ。もともと料理は得意だったそうで、てきぱき調理する姿は輝いてみえた。材料の計量、生地作り、形作りなど、複雑な作業にも熱心に取り組んだ。
 担当の馬渕寛子支援員は、「責任感が強く、自分が決めたことなら最後までやり抜く力がある」と、ひとみさんの意外な一面に驚いたという。
 調理を支援する管理栄養士の今西絵里さんは、作業の前後に「よろしくお願いします」、「ありがとうございました」などのあいさつを欠かさないひとみさんの礼儀正しさに感心した。

■できることに着眼
 実はひとみさんは以前、施設の中で少し孤立していた。病気の影響で理由もなく大声で怒鳴ってしまったり、他人の持ち物を自分の物と思い込み、返さなかったりしたため、他の利用者から「困った人」と思われ、避けられるようになっていったという。
 そんな様子を心配した支援員らが「やりがいにつながれば」と「おやつ作り」の機会を提案したのだ。困った状況ばかりに目を向けず、少しでもできそうなことにチャレンジしてもらう。支援の基本ともいうべき働きかけが、ひとみさんの隠れた力を引き出した。
 最近のひとみさんは、才能が開花し、テレビなどの情報をもとに、自らメニューを提案するようになった。他の利用者からの「おいしかったよ」の一言が、何よりの励みになっている。                          (企画推進本部 和田依子)

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