連載きずな

 連載「きずな―三恵園日記」は、事業団が運営する施設で日々繰り広げられている日常の表情を中心に報告しています。産経新聞西日本版朝刊で平成22年6月から連載がスタート。

現在は大阪版が毎月奇数火曜日朝刊、他の西日本地域版は随時、主に朝刊に連載中です。

平成23年10月、それまでの約1年半にわたる連載記事をまとめた「きずな-三恵園日記」を刊行。平成26年1月、過去の記事から118の物語をテーマごとに編集した「障害者支援の1200日 ありがとう」を刊行しました。福祉施設の現場で起きる笑い、涙、驚き、喜びなど、「現場」の”ちょっといい話”が満載。ぜひお読みください。

ご希望の方は、書店、インターネット、または事業団本部までお問い合わせください。

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【きずな「三恵園」日記】「おやつ作り」が引き出す力

2016年10月18日

 障害者支援施設「第2三恵園」(能勢町)で、月に一度の「手作りおやつを食べる会」が催された。今月のおやつはチョコレートムースケーキ。利用者の藤原ひとみさん(52)=仮名=が30人分を作った。自らケーキを配るひとみさんに「いつもありがとうね」と1人の利用者が声をかけた。今までになかった光景だった。

■見えてきた意外な一面
 ひとみさんがおやつ作りを始めて1年以上たつ。もともと料理は得意だったそうで、てきぱき調理する姿は輝いてみえた。材料の計量、生地作り、形作りなど、複雑な作業にも熱心に取り組んだ。
 担当の馬渕寛子支援員は、「責任感が強く、自分が決めたことなら最後までやり抜く力がある」と、ひとみさんの意外な一面に驚いたという。
 調理を支援する管理栄養士の今西絵里さんは、作業の前後に「よろしくお願いします」、「ありがとうございました」などのあいさつを欠かさないひとみさんの礼儀正しさに感心した。

■できることに着眼
 実はひとみさんは以前、施設の中で少し孤立していた。病気の影響で理由もなく大声で怒鳴ってしまったり、他人の持ち物を自分の物と思い込み、返さなかったりしたため、他の利用者から「困った人」と思われ、避けられるようになっていったという。
 そんな様子を心配した支援員らが「やりがいにつながれば」と「おやつ作り」の機会を提案したのだ。困った状況ばかりに目を向けず、少しでもできそうなことにチャレンジしてもらう。支援の基本ともいうべき働きかけが、ひとみさんの隠れた力を引き出した。
 最近のひとみさんは、才能が開花し、テレビなどの情報をもとに、自らメニューを提案するようになった。他の利用者からの「おいしかったよ」の一言が、何よりの励みになっている。                          (企画推進本部 和田依子)

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