連載きずな

 産経新聞西日本朝刊で連載してきた「きずな―三恵園日記」は、令和元年6月から「きずなNEWS」として模様替えし、新たにスタートします。

 事業団は、産経新聞社の社会貢献を目指して昭和19(1944)年に設立されました。社会福祉法人として、支援を必要とする人々のために幅広い活動をする「公益事業」と、障害のある人々を直接支援する「社会福祉事業」を2本柱としています。

 平成28(2016)年4月の改正社会福祉法の施行で社会福祉法人には地域における公益活動が義務付けられ、それまでより一層「地域福祉」「地域共生」を強力に推し進めるよう求められました。

 これを受け、きずなNEWSでは事業団が運営する施設の日常の表情を報告するだけでなく、施設と地域との交流、事業団の社会公益活動についても紹介していきます。

 平成22年6月からスタートした「きずな―三恵園日記」は23年10月、それまでの約1年半にわたる連載記事をまとめた「きずな-三恵園日記」として刊行され、26年1月には過去の記事から118の物語をテーマごとに編集した「障害者支援の1200日 ありがとう」として刊行されました。どちらも福祉現場の”ちょっといい話”が満載です。ご希望の方は事業団本部までお問い合わせください。

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連載きずな

【きずな「三恵園」日記】知ってるよ、たんぽぽの人!

2016年08月30日

 障害福祉サービス事業所「豊能町立たんぽぽの家」(豊能町)の利用者、東浦久男さん(61)は、地元の小学生の間ではちょっとした有名人だ。ふだんは事業所でアルミ缶のリサイクル作業やパソコン作業をしているが、年に数日、小学校に出向き、「福祉授業」で話をしている。幼いころうまく歩けず、小学校にはほとんど通えなかったが、今は喜んで講師役を務めている。

■簡単なことでいい
 福祉授業の目的は互いを知ること。児童が事業所に見学に来たり、利用者が学校に出向いて話をしたりと、交流そのものに意義がある。
昨年冬、ある小学校を訪ねたときのことだ。「障害がある人が困っていたらどうすればいいと思いますか」という教師の問いかけに、児童らは「手話をする」「点字で書く」など、活発に意見を出した。
 次に東浦さんが自らの困った体験を話した。電気店に買い物に出かけたが、口のまひで言葉が伝わらず、店員に応対してもらえなかった。結局何も買えずに帰ってきたという話。こんなときは、どうすればいいのか。児童らは急に黙り込んでしまった。
 東浦さんが「無視しないで、分かるまで最後まで話を聞いてくれるだけでいい」と伝えると、児童らは、ポカンと口を開けた。
 「そんな簡単なことなんだ!」

■地域の身近な存在に
 半年後の今年の夏祭り。露店でにぎわう会場に「たんぽぽの家」の移動販売車がホットドッグの店を出していると、子供らが駆け寄ってきた。
 「僕、この車の中を見たことがある」と話すのは、以前見学に来た小学生だ。「僕も知っている。学校に来た、たんぽぽの人だ」と、ホットドッグを売る利用者に声を掛ける子もいた。東浦さんも、町でたびたび声を掛けられる。「たんぽぽの人」は身近な存在になっている。
(企画推進本部 和田依子)

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