連載きずな

 連載「きずな―三恵園日記」は、事業団が運営する施設で日々繰り広げられている日常の表情を中心に報告しています。産経新聞西日本版朝刊で平成22年6月から連載がスタート。

現在は大阪版が毎月奇数火曜日朝刊、他の西日本地域版は随時、主に朝刊に連載中です。

平成23年10月、それまでの約1年半にわたる連載記事をまとめた「きずな-三恵園日記」を刊行。平成26年1月、過去の記事から118の物語をテーマごとに編集した「障害者支援の1200日 ありがとう」を刊行しました。福祉施設の現場で起きる笑い、涙、驚き、喜びなど、「現場」の”ちょっといい話”が満載。ぜひお読みください。

ご希望の方は、書店、インターネット、または事業団本部までお問い合わせください。

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【きずな「三恵園」日記】知ってるよ、たんぽぽの人!

2016年08月30日

 障害福祉サービス事業所「豊能町立たんぽぽの家」(豊能町)の利用者、東浦久男さん(61)は、地元の小学生の間ではちょっとした有名人だ。ふだんは事業所でアルミ缶のリサイクル作業やパソコン作業をしているが、年に数日、小学校に出向き、「福祉授業」で話をしている。幼いころうまく歩けず、小学校にはほとんど通えなかったが、今は喜んで講師役を務めている。

■簡単なことでいい
 福祉授業の目的は互いを知ること。児童が事業所に見学に来たり、利用者が学校に出向いて話をしたりと、交流そのものに意義がある。
昨年冬、ある小学校を訪ねたときのことだ。「障害がある人が困っていたらどうすればいいと思いますか」という教師の問いかけに、児童らは「手話をする」「点字で書く」など、活発に意見を出した。
 次に東浦さんが自らの困った体験を話した。電気店に買い物に出かけたが、口のまひで言葉が伝わらず、店員に応対してもらえなかった。結局何も買えずに帰ってきたという話。こんなときは、どうすればいいのか。児童らは急に黙り込んでしまった。
 東浦さんが「無視しないで、分かるまで最後まで話を聞いてくれるだけでいい」と伝えると、児童らは、ポカンと口を開けた。
 「そんな簡単なことなんだ!」

■地域の身近な存在に
 半年後の今年の夏祭り。露店でにぎわう会場に「たんぽぽの家」の移動販売車がホットドッグの店を出していると、子供らが駆け寄ってきた。
 「僕、この車の中を見たことがある」と話すのは、以前見学に来た小学生だ。「僕も知っている。学校に来た、たんぽぽの人だ」と、ホットドッグを売る利用者に声を掛ける子もいた。東浦さんも、町でたびたび声を掛けられる。「たんぽぽの人」は身近な存在になっている。
(企画推進本部 和田依子)

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