連載きずな

 産経新聞西日本朝刊で連載してきた「きずな―三恵園日記」は、令和元年6月から「きずなNEWS」として模様替えし、新たにスタートします。

 事業団は、産経新聞社の社会貢献を目指して昭和19(1944)年に設立されました。社会福祉法人として、支援を必要とする人々のために幅広い活動をする「公益事業」と、障害のある人々を直接支援する「社会福祉事業」を2本柱としています。

 平成28(2016)年4月の改正社会福祉法の施行で社会福祉法人には地域における公益活動が義務付けられ、それまでより一層「地域福祉」「地域共生」を強力に推し進めるよう求められました。

 これを受け、きずなNEWSでは事業団が運営する施設の日常の表情を報告するだけでなく、施設と地域との交流、事業団の社会公益活動についても紹介していきます。

 平成22年6月からスタートした「きずな―三恵園日記」は23年10月、それまでの約1年半にわたる連載記事をまとめた「きずな-三恵園日記」として刊行され、26年1月には過去の記事から118の物語をテーマごとに編集した「障害者支援の1200日 ありがとう」として刊行されました。どちらも福祉現場の”ちょっといい話”が満載です。ご希望の方は事業団本部までお問い合わせください。

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【きずな「三恵園」日記】才能引き出す野菜栽培

2017年09月26日

「野菜作りは僕の天職」と胸を張る男性がいる。就労継続支援事業所「すみれ工房」(能勢町)の利用者、西村優仁さん(45)だ。これまでのペットフードの製造では思うような作業はできなかったが、事業所が管理する畑の耕作では別人のように精を出す。野菜栽培の作業スケジュールなどを書き込んだ独自の「収穫日記」も付けるほどの力の入れようだ。その変貌ぶりに地域の人は温かいエールを送る。

■新たな分野でやりがいを
西村さんは平成27年5月、すみれ工房にやってきた。当初は室内でのペットフード作りに従事。計量や袋詰めなどの作業にあたっていたが、思い込みでときおり周囲と対立したこともあった。西谷博史支援員は「自分の役割がみえず、少し浮いた存在になっていました」と振り返る。
そんな西村さんを見て事業所は今年5月、室外での野菜担当を要請。「新しい分野にチャレンジしてもらい、それがやりがいにつながればと事業所で話し合いました。この働きかけが隠れた才能を引き出す結果となりました。開放的になれる屋外での作業も合っているようです」(西谷支援員)。野菜作りでは、暑い日でも丁寧に草取りをするなど、責任感も強くなった。

■地域から日記名の提案も
「収穫日記」の作成は、西村さんからの申し出によるものだった。キュウリ、ナス、ダイコンといった栽培している野菜の支柱立て、間引き、除草、収穫時期などを1週間単位で記入。西村さんが気づいた病害虫に対する注意点も細かく書かれている。事業所では今後、畑を管理する作業カレンダーとして役立てるという。
西村さんは地域での野菜販売も行っている。畑で汗を流す西村さんを知る近所の人は、快く買ってくれたり、苗を分けたりしてくれる。「新鮮で、とてもおいしかった」の言葉も励みになる。西村さんは日記を付けていることを販売の際に話し、アドバイスも受ける。地元の人は、西村さんが畑で楽しく働く姿を見て、日記の名前を「畑楽(はたらく)日記にしては」と提案するほどの間柄になった。
                                            (三宅統二)

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