連載きずな

 産経新聞西日本朝刊で連載してきた「きずな―三恵園日記」は、令和元年6月から「きずなNEWS」として模様替えし、新たにスタートします。

 事業団は、産経新聞社の社会貢献を目指して昭和19(1944)年に設立されました。社会福祉法人として、支援を必要とする人々のために幅広い活動をする「公益事業」と、障害のある人々を直接支援する「社会福祉事業」を2本柱としています。

 平成28(2016)年4月の改正社会福祉法の施行で社会福祉法人には地域における公益活動が義務付けられ、それまでより一層「地域福祉」「地域共生」を強力に推し進めるよう求められました。

 これを受け、きずなNEWSでは事業団が運営する施設の日常の表情を報告するだけでなく、施設と地域との交流、事業団の社会公益活動についても紹介していきます。

 平成22年6月からスタートした「きずな―三恵園日記」は23年10月、それまでの約1年半にわたる連載記事をまとめた「きずな-三恵園日記」として刊行され、26年1月には過去の記事から118の物語をテーマごとに編集した「障害者支援の1200日 ありがとう」として刊行されました。どちらも福祉現場の”ちょっといい話”が満載です。ご希望の方は事業団本部までお問い合わせください。

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【きずな「三恵園」日記】故人が植えたチューリップ開花

2017年04月25日

色とりどりのカップ状の花を咲かせるチューリップ。今、障害者支援施設「第2三恵園」(能勢町)で、紫色のチューリップが玄関回りを鮮やかに彩っている。今年早々に80歳の生涯を終えた入所者、赤松繁喜さんの植えた球根が見事に開花したのだ。親しかった仲間たちは、故人をしのびながら花をめでている。

■園芸には無関心ながら
赤松さんは、施設開所当初の平成5年12月に入所。最も利用期間の長い一人だった。軽度の知的障害があったものの、健康面で支障はなかったという。
そんな赤松さんが昨年9月に吐血し、救急車で病院に運ばれた。検査の結果、胃と肝臓にがんが見つかり入院。闘病生活を続けていたが、翌月には「みんなに会いたい」という赤松さんの希望で施設に戻った。
その際、園芸や花に興味のなかった赤松さんが園芸コーナーを訪れ、「植えたいわ」と球根をいきなり鉢に植え込んだ。11月には発熱で再入院し、今年1月27日、帰らぬ人となった。

■「何年も咲かせたい」
「リーダー的な存在」として仲間から親しまれていた赤松さん。一時退院の昨年10月に行われた地域に感謝する施設のイベントでは、来場した地域の人たちに利用者代表としてあいさつ。張りのある声で拍手を浴びていた。それだけに別れを惜しむ仲間は多い。園芸担当の稲葉美智恵職員もその一人。「もっと元気でいてもらい、一緒に花を観賞することを楽しみにしていたのに...」。
赤松さんが植えた紫のチューリップの花言葉は「不滅の愛」。これを「赤松さんからのメッセージ」として施設はとらえ、咲き終わった後の球根は保存する。手入れをしっかり行い、来年も咲かせることにしている。「赤松さんは球根を植えることで何かを残したかったのでは」「赤松チューリップを何年も咲かせたい」。赤松さんは仲間の心の中で生き続ける。
                                                                           (三宅統二)

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