連載きずな

 連載「きずな―三恵園日記」は、事業団が運営する施設で日々繰り広げられている日常の表情を中心に報告しています。産経新聞西日本版朝刊で平成22年6月から連載がスタート。

現在は大阪版が毎月奇数火曜日朝刊、他の西日本地域版は随時、主に朝刊に連載中です。

平成23年10月、それまでの約1年半にわたる連載記事をまとめた「きずな-三恵園日記」を刊行。平成26年1月、過去の記事から118の物語をテーマごとに編集した「障害者支援の1200日 ありがとう」を刊行しました。福祉施設の現場で起きる笑い、涙、驚き、喜びなど、「現場」の”ちょっといい話”が満載。ぜひお読みください。

ご希望の方は、書店、インターネット、または事業団本部までお問い合わせください。

連載きずな詳細

連載きずな

【きずな「三恵園」日記】長寿祝いが励みに

2016年09月06日

 救護施設「三恵園」(能勢町)で暮らす斎藤末子さんは95歳。先月、誕生日を迎え、山口禎・能勢町長が長寿の祝いに、施設を訪れた。これまでとは異なり、今回施設で暮らす高齢者もお祝い訪問の対象になったとあって、敬老月間(9月)を前にうれしい出来事となった。
 「いつまでも元気に長生きしてください」と山口町長が末子さんの手を握り、祝い状を手渡すと、「来ていただいてありがとうございます」と末子さんは深々と頭を下げた。

■三恵園とともにある人生
 末子さんは大正10(1921)年生まれ。病院で知的障害があると診断され、35歳で堺市の養気園(三恵園の前身)に入所した。養気園は戦後の混乱期に行き場をなくした女性のために産経新聞厚生文化事業団が開設した施設だ。天涯孤独となっていた末子さんは、その後施設の移転に伴い能勢町へ。障害者が生きづらかった時代背景もあり、そのまま施設で暮らした。
 末子さんは礼儀正しいしっかり者。若いころは内職のほか、外で家政婦のような仕事もした。得意なのは百人一首。今でも職員が上の句を詠むと、素早く下の句を答えるほどの腕前だ。

■仲間も拍手を送る
 町長の訪問が知らされたのは3週間前。最近ぼんやり過ごしがちだった末子さんだが、その知らせに手をたたいて喜び、目に力が戻った。「どんな服を着たらいいかな。何てあいさつをすればいいかな」と張り切る末子さん。担当職員の尾上寿雅子さんもうれしい気持ちに寄り添い、あれこれ相談に乗った。
山口町長の訪問当日、末子さんは尾上さんが買ってきたレースのカーディガンを着た。唇には薄い口紅が。同じフロアで暮らす仲間と職員が見守り、拍手を送った。
 「ちょっと緊張したわ」と照れる末子さん。小さなスポットライトが当たった瞬間だった。
(企画推進本部 和田依子)

ページトップにもどる