連載きずな

 連載「きずな―三恵園日記」は、事業団が運営する施設で日々繰り広げられている日常の表情を中心に報告しています。産経新聞西日本版朝刊で平成22年6月から連載がスタート。

現在は大阪版が毎月奇数火曜日朝刊、他の西日本地域版は随時、主に朝刊に連載中です。

平成23年10月、それまでの約1年半にわたる連載記事をまとめた「きずな-三恵園日記」を刊行。平成26年1月、過去の記事から118の物語をテーマごとに編集した「障害者支援の1200日 ありがとう」を刊行しました。福祉施設の現場で起きる笑い、涙、驚き、喜びなど、「現場」の”ちょっといい話”が満載。ぜひお読みください。

ご希望の方は、書店、インターネット、または事業団本部までお問い合わせください。

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【きずな「三恵園」日記】「ひーくん」が贈るランドセル

2016年09月27日

 ずらりと並ぶ色とりどりのランドセル。来春に向けた販売が夏前から始まっている。東尚史(あずまひさし)さん(29)は入学祝いのランドセルを買いに、めいのゆいちゃん(6)=仮名=の家族と兵庫県伊丹市内のショッピングモールに行った。
 「どれがいいんや?」と東さんは優しく尋ねた。試しに背負っては鏡を振り返り、似合うかどうかを確かめるゆいちゃん。濃いピンクのものを選んだ。

■5年前からコツコツと
 就労継続支援事業所「ワークスペースさつき」(池田市)の利用者、東さんは、袋詰めなどの内職をして賃金を得ている。姉の長女、ゆいちゃんのことがかわいくて仕方がなく、会うと友達のようにふざけあって遊んだ。5年前、家族の勧めでランドセルのプレゼントを計画。毎月の賃金からコツコツ千円ずつ貯金し、仕事の張り合いにもなった。
 ゆいちゃんは東さんを「ひーくん」と呼んで慕っている。あるとき、ゆいちゃんが東さんのボランティアについてきた。実は東さんは、ご近所のアルミ缶を回収し、福祉施設に寄付する活動を長年続けている。雨の日も風の日も、20軒以上の家を週に1度訪問してきた。
 東さんがいつものようにインターホンを押し、無言で待っていると、ゆいちゃんからダメ出しが。
 「ほら、ひーくん。黙ってないで『こんにちは』って言わなくっちゃ!」
 ゆいちゃんはいつの間にか、ちょっぴりお姉さんになっていた。

■誰かの喜びが自信に
 東さんの活動は近所で評判だ。アルミ缶と「いつもありがとう」という温かい言葉を玄関で受け取り、東さんは地域としっかりつながっている。「誰かが喜んでくれること」が自信になっている。
 「ランドセル、もう届いたかな」
 注文品が届くのは来月。今はゆいちゃんの喜ぶ顔を待つ日々だ。                   (企画推進本部 和田依子)

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