連載きずな

 連載「きずな―三恵園日記」は、事業団が運営する施設で日々繰り広げられている日常の表情を中心に報告しています。産経新聞西日本版朝刊で平成22年6月から連載がスタート。

現在は大阪版が毎月奇数火曜日朝刊、他の西日本地域版は随時、主に朝刊に連載中です。

平成23年10月、それまでの約1年半にわたる連載記事をまとめた「きずな-三恵園日記」を刊行。平成26年1月、過去の記事から118の物語をテーマごとに編集した「障害者支援の1200日 ありがとう」を刊行しました。福祉施設の現場で起きる笑い、涙、驚き、喜びなど、「現場」の”ちょっといい話”が満載。ぜひお読みください。

ご希望の方は、書店、インターネット、または事業団本部までお問い合わせください。

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【きずな「三恵園」日記】「ひとりじゃない」成人式

2016年03月15日

 ある日曜日の昼下がり。救護施設「三恵園」(能勢町)で成人式があった。ピンクの振り袖に金襴(きんらん)の帯。晴れ着姿で臨んだのは今年20歳を迎えた入所者、川中彩さん=仮名=だ。新成人は、彩さんただ一人。式といっても着物姿で写真を撮るだけのささやかなものだったが、多くの職員らに祝福され、大人の仲間入りをした。

■職員のカンパで振り袖
 事情があって家族と暮らせなくなった彩さんは、2年前、同園に入所。過去のつながりを断って再スタートするため、育った街での成人式には出られなかった。
 「せめて着物を着てみたい」
 彩さんは願いを担当の吉山由美子支援員に相談。生活費の中から着物のレンタル代をコツコツ貯金し始めたが、なかなかたまらなかった。
 彩さんは居宅訓練ホームで自立に向けて家事や仕事などを訓練中。来年秋までの期限付きなので、その後はホームを出て生きていかなければならない。不器用ながらも頑張る彩さんの姿に吉山さんは、「みんなでお祝いをしませんか」と職員らにカンパを呼びかけた。「成人式が次のステップを踏み出す彩さんの力になれば」という吉山さんの思いに、多くの職員が賛同。着物のレンタル代が集まり、月遅れの成人式になった。

■「お母さんの温かみ」
 髪飾りは職員が探した。着付けと化粧、髪のセットは、ボランティアで度々園を訪れる民謡サークルの女性とその娘さんが快く引き受けてくれた。
 式終了後、吉山さんは彩さんから職員宛ての手紙を受け取った。
 「とてもいい一日でした。ひとりでさみしかったですけど、これからは前に進みたい。お母さんがいるような温かみがありました」
彩さんはもう一人ではなかった。 (企画推進本部 和田依子)

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