連載きずな

 産経新聞西日本朝刊で連載してきた「きずな―三恵園日記」は、令和元年6月から「きずなNEWS」として模様替えし、新たにスタートします。

 事業団は、産経新聞社の社会貢献を目指して昭和19(1944)年に設立されました。社会福祉法人として、支援を必要とする人々のために幅広い活動をする「公益事業」と、障害のある人々を直接支援する「社会福祉事業」を2本柱としています。

 平成28(2016)年4月の改正社会福祉法の施行で社会福祉法人には地域における公益活動が義務付けられ、それまでより一層「地域福祉」「地域共生」を強力に推し進めるよう求められました。

 これを受け、きずなNEWSでは事業団が運営する施設の日常の表情を報告するだけでなく、施設と地域との交流、事業団の社会公益活動についても紹介していきます。

 平成22年6月からスタートした「きずな―三恵園日記」は23年10月、それまでの約1年半にわたる連載記事をまとめた「きずな-三恵園日記」として刊行され、26年1月には過去の記事から118の物語をテーマごとに編集した「障害者支援の1200日 ありがとう」として刊行されました。どちらも福祉現場の”ちょっといい話”が満載です。ご希望の方は事業団本部までお問い合わせください。

連載きずな詳細

連載きずな

【きずな「三恵園」日記】「働き続ける」を陰で支える

2015年03月17日

 池田市の障害福祉サービス事業所・市立くすのき学園の支援員、芦田大地さん(31)は、施設内で朝の仕事を終えた後、大阪大の豊中キャンパスに向かった。学内の「多様な人材活用推進支援室」で雇用された、ある女性に会いに行くためだ。
 「久しぶりやね。元気にしてる?」
 芦田さんの呼びかけに、はにかんだ笑顔をみせ、こくりとうなずいたのは、石井優美さん(20)だ。昨年3月から学内の清掃・美化の非常勤スタッフとして勤務。自転車置き場などで整理や清掃をしている。
 芦田さんは、石井さんがくすのき学園で2年間、就労訓練を受けたときの担当者。石井さんの訓練だけでなく、就職活動や面接にも付き添った。1週間の実習期間中は一緒に仕事場に行き、不安を取り除いた。朝、出勤できるように、石井さんを起こしに行ったこともあった。
 「就職は、タイミングさえ合えばチャンスがある。本当に難しいのは、定着することです」と芦田さん。就職後も利用者の「定着支援」に特に力を入れてきた。
定期的に職場に連絡を入れて様子を尋ねたり、仕事中、直接本人に会って励ましたりする。芦田さんは、就職後の石井さんのメンタル面を陰で支えている。
■職場でもフォロー
 「彼女、この1年で作業レベルがすごく進歩しましたよ」
 芦田さんにそう話すのは、石井さんの仕事場で職場リーダーを務める矢尾眞幸さん(53)だ。豊中キャンパスで働く障害者スタッフ12人を、矢尾さんら4人の職場リーダーが個々の特性に応じて手厚く指導している。
 大阪大の支援室は平成20年、吹田キャンパスで最初に発足。障害者雇用に先立ってリーダー職を雇用した。職員には福祉研修や講座へ参加させ、スキルアップを図っている。ただ、職場リーダーは年限がある非常勤職員なのが悩ましいところだ。
 芦田さんは支援室を訪れるたびに、矢尾さんらと情報交換し、リーダーの存在の大きさを実感する。
 「障害者を職場で支援する人材がもっと育成されればいいのですが・・・。私たちの施設のノウハウなども積極的に提供し、働く障害者を一緒に支援していきたい」と芦田さんは語った。
(企画推進本部 和田依子)

ページトップにもどる