施設運営
こすもすの1日
活動紹介
秘めた思いを受けとめる
2012年12月13日
ふだん何げなく行っているコミュニケーション。でも障害でその力が損なわれていたらどう支援したらいいのだろう。
悦子さん(38)は強い自閉的傾向があり、入所施設などを経たのち、平成18年から通所の生活介護事業所「こすもす」(池田市)へ通うようになった。短い言葉は交わせるが、意思を表現できず、ストレスが高まると衣服を破ったり、それをトイレに詰めたりする。活動に参加せず、ずっと寝てすごすことが多く、ウオーキングは嫌い。体重は100キロを超えている。
「衣服を破るのはなぜだろう」
担当の支援員、佐向紀子さんは疑問に思った。当初は悦子さんが衣服を破ると「服は着とくものよ」と、行為を止めることに気を奪われ、悦子さんが発した「きつい」「いらん」といった言葉に注意を向けなかった。しかし、悦子さんが赤い服は破ることが少ないことに気づき、悦子さんに「色が嫌いなの」「感触が嫌なの」と聞き、返事に応えるようにしたところ、服を破ることが激減した。
なんでもないと思っていた言葉の断片が意味を持ちだした。
佐向さんは悦子さんの「好き」探しをして、少しの頑張りと楽しみ、役割を持つといった彩りを生活の中に取り込めないか探った。
着目したのは音楽。口ずさんでいるメロディーを組み合わせて室内を歩くときのCDを作成。ウオーキング-缶のプルトップ外し-音楽-掃除-ティータイムという日課を作った。最初の気づきから約3年、悦子さんはついに自分の意思でウオーキングに行くように。さらに掃除も嫌がらずするようになった。
どこか楽しそうな表情さえみせながら掃除機をかける悦子さん。そのビデオを見たお母さんは自宅とのギャップに「びっくりしました。家でもやってもらおうかな」。
佐向さんはいま「利用者の意思を受けとめる」の意味を知った。